森鉄工株式会社



Sep,1998
ユーザーレポート
   珍しいFB加工の応用例が(株)山本製作所から発表されプレス技術誌98年6月号(76〜80頁)に以下のように掲載されました。難加工材の加工できる範囲の拡大、高価格の球状化焼鈍材料でなくとも、FB加工を可能とする努力がなされました。


FB加工領域の改革
(加熱した素材を鍛造してFB 加工で仕上げる)
(株)山本製作所 山本勝弘
1) はじめに
   1964年に初めてスイスから我が国に輸入されたFBプレスは、それまでのプレス加工とは異なり、切り口全体を平滑にせん断出来ることから、従来の打ち抜き加工のままでは得られなかったきれいな仕上げ面 を、後工程なしで、せん断だけで仕上げる手段に応用され、製品精度の優れた部品の加工で、技術面 だけでなく経済性でも特徴を発揮し、著しく普及した。

   FB加工に関しては東京大学工学部・前田禎三名誉教授が中心となり世界に誇れる数多くの基礎実験がなされ理論的な裏付けがされた。現在広く使われているFB加工技術は企業の製品設計担当者・生産技術者・弊社のようにFB部品の賃加工をする企業などを中心に実用面 での研究開発がされた物で、日本での基幹産業である自動車産業の発展と平行してFB加工のハードウェアとソフトウェア用途の開発は盛んになされ、素材の種類・厚さ・製品の大きさなど加工領域は日本で開発されたものも数多くあり、当初では想像もできないほどまで拡大している。FB加工の複合成形加工製品の開発の経過を見ると、従来の精密せん断加工に鍛造加工工程を組み込んだことによって旋削工程からの転換、組立作業の削除、材料の低減などで利点が評価され、最近はプレス加工業者からの設計変更、工法転換、新素材の応用などと連携した取り組みが効果 を生み、常温加工でありながらも三次元的な形状の複合成形加工まで可能となった。製品設計の時点からFB加工をする前提とした他の工程では一切加工することが不可能な部品も数多く誕生したことによって、もはや欠くことの出来ない重要な生産手段として定着した。多くの優れた特徴のあるFB加工技術は21世紀に向けて今後ますます幅広く技術革新の中で物づくりでの価格競争力で底力を発揮することは明らかで、厳しい経済環境の中でこそこれらの先端技術に携わっている企業だけが生き残れることを物語っている。

   一般にはFBプレスさえ利用して部品加工をしているならば忙しいと思われがちであるが、FB部品加工の仕事の中で自動車関連の部品生産比率は80%と高く、この業界でのコストに対しての追求は他の産業とは比べ物にならないほど厳しく、一言でFB加工と言っても従来のような初歩的な厚さ2〜3mm程度の軟質材を用いて単純な形状の製品をせん断する程度のレベルで部品加工をしたとしても、一般 プレス加工の技術も向上したので、客先の並ならぬ原価低減要求に対応するにはほど遠く、最新のハードウェア並びにソフトウェアと豊富な経験に裏付けられて積極的な共同開発機能と開発投資とを実践できる勇気と実力を備えた企業だけに、消化できないほどの付加価値の高い数多くのFB加工が集中しているのが実状である。

   2) 自社開発への取り組み
   弊社ではこれまで営業拡大の手段として他社よりも短納期で金型の立ち上げに努め、精度の高い複合成形加工とそれらの品質の安定及び製品を低コストで提供するために全社が一丸となって取り組み、またFBプレス機械のメーカーからは使う立場からの技術面 と経済性を考えた特別仕様の機械を提供してもらった。

   営業面では工法の転換・設計の変更などの自社開発製品を積極的な紹介、数限りない改善提案によって日本国内だけではなく北米でも他社よりもはるかに多くの新製品の受注に結びつけてきた。日本国内でのFB加工のトップメーカーである弊社は、FBプレスの保有台数が多いだけでなく国産の最大級の1,200トンの能力を持ったFBプレスを活用し、厚板・硬質材・複合成形などでFB加工で日本の業界を常にリードし新技術情報の発信基地としてその座を占めている。
   例えば、世界中には弊社よりもFB加工に関する経験豊富なプレス機械のメーカー或いはその販売会社などでしかも部品加工業を兼業している企業はあるが、誰一人としてこれまで厚さ19mmの材料の加工に挑戦をしなかった。
   もし厚さ20mmの又は25mmの適当な材料が身近に有ったなら、むろんその厚さの工程にも我々はチャレンジしていた。では単に金型の強度を高めるだけでこれが出来たのだろうか、決してそれほど単純ではない。単なる精神的な挑戦に欲だけでなくこれまでの様々な経験が技術的なバックボーンとして活かされ、加工油の物性・金型内部の潤滑機構・加工時の発熱などを科学したことこそ、この領域の拡大に弾みをつけたのであった。

   3) 加工目的とその効果
   弊社々が、アメリカのと国内の自動車メーカー2社から偶然にも同様な興味深い鍛造とせん断加工複合部品加工の引き合いをほぼ同時に得たのは97年5月中旬に加工をした19mmのFB部品の加工の新聞発表直後で、国内と海外の市場開発へ積極的な提案型の営業活動を開始した矢先であっただけに嬉しくもあり、何人ものスタッフがその製品の加工方法を早速検討したが素材が25mmのFB加工の経験は世界中では誰も試みたことが無く、ましてその製品の一部を著しく成形する必要があるので多くの開発資金を投入して各種の実験を行わなければならず、客先からの負担額は必ずしも十分とは言えないのが悩みでもあった。多くの時間と出費の後にこの早春にようやく基本技術の開発に成功し、このほど実用化へ向けてFB加工を中心とした半熱間複合成形加工の試作の第一段階を終えた。

   この最大のねらいはFB赤穂では静水圧効果 を活用して材料の塑性変形能を高めて従来の加工よりも有利にすることは広く知られていたが、実際の応用されている範囲はまだ限られているのでその応用範囲をいかにして拡大しようが様々な試行を続け、その結果 従来の常温下降では材料の物性の制約を受けて成形加工が困難であった複雑な二次元的な形状の成形範囲の拡大と経済的な実用化にコロンブスの卵の様であるが素材を加熱して塑性変形能をこれまで異常に高めて複合成形を有利に行おうと言う改革に焦点を当てた。

手段としてはかねてより冷間鍛造(株)の沢辺社長などが提案し続けた
●鍛造技術とFB加工技術の融合。
●素材と最終製品の形状の関連の追求。
●ヘッダーやフォーマーでの加工範囲をFB加工と組み合わせ。
●棒材・シート材・既に何らかの前加工を終えた部品を素材とする
など多喜に渡るものである。

   4) 加工に先立ってプロジェクトチームで行った準備と検討。
●製品形状詳細の見直し・要求精度・生産量。
●素材の形状精度・材質・物性・組織・形成性。
●冷間加工と熱間加工の技術および経済性での比較。
●加熱時間と温度との変形能への影響。
●金型の熱による精度と寿命への影響。
●金型の材質・構造・政策手段・表面処理・冷却手段。
●各種潤滑剤の塗布方法・効果・入手性・経済性。
●加工条件の違いと製品の仕上がりの変化。
●素材の投入と製品の取り出し。

   5) 設備機械の選択。
   基礎実験の後に経済的な観点から3案に絞って試作を開始した。
   第1案では鍛造工程に冷間揺動プレスとFBプレスと併用することを考え、第2案では、素材を加熱して揺動鍛造を行うことを考えた。揺動成形加工では少ない圧力で逐次成型をするので従来の鍛造よりも成型性が優れ、機械設備費が少なく、素材を単片に分離して供給するので材料歩留まりが他の工程より優れていることなどの魅力を備えているが、部品一個当たりの成型時間に約7〜8秒要するので高速化が必要である。
   第3案としては1台のFBプレスで鍛造とせん断の両方の加工をすることを考えた。もしそれが可能となれば揺動成形より加工サイクルを早くできる。
   基礎実験では問題ではなくても複雑な3次元の形状の製品をいくつかの工程間をどのような装置で搬送するか、鍛造工程とせん断工程での圧力が著しく違うが偏芯荷重にどのように対応するか、またFBプレスのインサートリングの寸法以内に金型の重圧部を納めるには多少無理があったが従来のFBプレスの構造のままで大幅な改善なしで試作は進められた。

   6) 試作加工の実際。
   今回の加工部品は断面 が25mm×25mmの正方形のSAE1010(JIS/S10C相当)の棒材を用いたアメリカの客先向けの試作品で、棒状の素材をせん断して加熱後直ちに鍛造を行った。ここで以外に困難であったのが素材をビレット状に変形を少なく、なおまた切り口面 を滑らかにせん断することで、先達の考案した技法を参考として色々試みたが、冷間での切断に関する試行は時間的な制約もあり途中で断念することになった。棒状のまま加熱して鍛造の前に切断を試みたところ切り口は多少向上したので最適温度を探すことに移った。また、棒状の素材を加熱して鍛造後に切断することも試みたが、最大の問題は加熱温度と加熱時間で、今までの経験と今回の実験から多くの金属の靱性約200〜300℃で高まるので加工性が悪くなり、500〜900℃程度が加工には適しているらしいことがわかった。
   これまでの試験が予想以上長時間必要となった理由の一つに潤滑剤の選択がある。鍛造に適し同時にせん断にも効果 を発揮することができる潤滑剤は国産でも輸入でも得難く、まして最初は200〜300℃で使えて自動塗布装置を通 過して素材に到達せられるものを入手することに夢中になり、二流化モチブデン・ボンデ処理・黒鉛ペーストなどを混合した潤滑剤では発火してしまったり、ある潤滑剤は熱には耐えたが成型後の離型性が問題となったり、せん断工程で切れ刃に構成刃先のような材料の凝着現象がみられ充分な潤滑効果 は得られなかった。まして500〜900℃での加工に適す潤滑剤を探すことは容易でなく、内外の自動車メーカー、国立の或る研究所やアメリカのNASAの資材調達部に潤滑剤を納入している業者などに協力を求めた結果 、品名はこの時点では公開できないが或る潤滑剤輸入商を経由した物と国産の特殊潤滑剤の入手にこぎ着けた。

   今回の試作での素材の加熱時間は以外に長く装置によっては4〜8秒も必要としたが、必要な生産量 を達成するためには時間当たりかなりの加工能力が必要となり、また鍛造、穴抜き、エンボッシングなどの一連の加工中に素材の温度を或る範囲に保つためにも時間は限られていて、即ち与えられた時間は僅かなので、まだ加熱方法に関しても技術改善をする必要がある。
   金型の温度の影響に関しては基礎実験と試作とで幾つもの金型を破損してしまったので、いくつかの大学・他社の熱間鍛造技術の専門家・ヨーロッパとアメリカの知人・鍛造メーカーなどにも相談を持ちかけた結果 、加熱装置と鍛造工程の金型とせん断あるいは髷などの後工程の金型の温度上昇は予想したよりも著しく、素材が常温の場合でも数十個の製品を加工で金型の温度は100〜150℃まで上昇するので、今回は鍛造金型に冷却剤強制循環抗を備えエアーも吹き付けることを試みた結果 、素材の熱が金型に移ることを或る程度は抑制することが出来た。

   7) 試作に用いた設備
   今回は総合能力650トン、逆圧力7〜130トン板押さえ圧力17〜320トン、30トンの補助圧力を上下のテーブルに各ライン備えたプレスを採用した。従来のFBプレスと違う点は、より高い圧力が発生できるように上下テーブルの************受圧部の厚みは各国で常用されているものより50%厚くし、しかも加圧速度の調整範囲の拡大・加圧状態の任意な保持となどもNC化してさまざまな条件でのシュミレーションを行える機能を備えた。

   今回の基礎実験で試験的に成形した部品は従来はS20Cを用いて総て切削加工で仕上げていた部品であるが毎月の必要量 の30,000〜37,000個の加工は難しく、コストの低減からも工法の変換が求められていた。製品形状は全長92.5mm、厚さ25mmでその長い側面 が半径2.5mmの円弧で厚さ方向に結ばれさらにその反対の側面には素材よりも熱い幅5mm厚さ7.5mmの成形が長さ全体にわたってあり、平坦な部位 には2mm段差を持ったM4のボルト用穴と直径7mm高2.5mmのエンボシングがある。この円弧 状の端面とアプセットっして素材を50%熱くした成形は加熱したこととFB加工特有の板押さえ圧力と逆圧力の双方の結果 によって材料の塑性変形能が高まったから常温よりは組織の破壊は少なく、ダレもコーナーのRも小さく細部まで十分に素材が流動したので成形し易かった。

   今回の試作は毎分23〜26ストロークで行ったが、FBプレスを用いたので従来の鍛造のような衝撃や振動も発生せず、また加工に必要な圧力を低減できた。
   金型のメンテナンスまでの耐久性は、鍛造部の金型の寿命は約1,000〜1,500ストロークであり、せん断部の金型の寿命は2,800〜3,600ストロークと違いが生じたが、予想した以上の効果 が得られたので今後は金型の寿命を延長する為の努力が必要である。

加工後の製品とスラグの金型からの取り出しは従来のFB加工ならばエアーブローでプレスの工法に吹き飛ばせるが今回の製品は重量 があるので試作では手作業としてきたが、量産には少なくともストローク長さ300mm、毎分15回は作動を出来る機械式の製品取り出し装置が必要になると思われる。ヘッダーやフォーマーのように多くの販売台数を期待できれば目的にふさわしい装置の開発を依頼できるが、今回のような機械の市場性はまだ十分に調査できていないのも悩みの種であった。

   8) これからの課題
   大型部品の複合加工での難しさは加工工程をいかに短縮して高い製品精度をエルかであるが、金型をあまり複雑にすると成型が完了してからどのように製品を取り出すかという問題が有る。

   機械加工された半加工品を供給するロボットの高速化と潤滑剤塗布装置の開発は継続中である。次に、金型の表面 の粗さが材料の流れに影響していることが懸念されているのでedm 加工表面 を自動的に手際よく磨いた後に現在試みている数種類の表面被覆処理のなかの最適な方法を採用する予定である。

   鍛造での問題は素材の精度・例えば異形材の断面 の形状精度または長さをどれほどにするかによって素材の蛇行などは大きく違うので、これから解決しなければならない課題は多い。

   9)まとめ
   FB加工の動向には、複合成形加工・鍛造品の後加工としての応用・型鋼などの異形状品の加工と領域を広めているが、鍛造加工も熱間から冷間加工に映った後に最近は加工度向上をねらって温間鍛造も試みられている。

   このプロジェクトに取り組んだことによって、自動車メーカーが必要としている厚く・重く・大きな複合成形加工は従来の設備のままでは対応することが困難であることを認識できた。
   弊社の積極的なチャレンジにはプレス機械のメーカーとの部品の納入先の後押しも忘れることは出来ない。また弊社の応用技術の拡大こそ特技として今後も守られると確信している。
   
07.Sep.1998 林 一雄

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